国際連合憲章の定める集団安全保障制度の下で、侵略の防止・鎮圧など軍事的強制措置のために使用される国際的常設軍隊。
しかし現実には大国間の相互不信により、まだ組織されたことはない。
現在、通常「国連軍」と呼ばれるのは、朝鮮戦争などにみられる新しい型の国際的兵力のこと。
これらは国連の指揮下にあり、国連で決議された一定の目的を達成するために活動する。侵略等の鎮圧を目的とする本来の国連軍とは異なる。
以下のように分けられる。
- 国連軍……1950〜63年の朝鮮戦争で出動した「国連軍」は、実質的には米軍及びその同盟軍であり、国連憲章の言う正規の国連軍ではない。
- 国際警察軍……紛争地域の秩序維持、紛争の平和的収拾を第一義とする。
主として中立的諸国から提供された兵力で組織され、関係国の同意のもとにのみ派遣される。だが歴史的には東西冷戦に於ける西側諸国の軍事力として用いられたことが多い。
1956年のスエズ動乱 (第2次中東戦争) 、1960〜63年のコンゴ動乱等に登場。
- 国連平和維持軍 (Peace Keeping Forces=PKF)……PKO (国連平和維持活動) に従事する軍隊で、紛争当事者の間に入って停戦させたり、その国内の治安回復に務める。武器の使用は自衛の場合のみに限られる。
国連の直接の統轄に服し、一般のPKO要員と同様、
- 紛争当事国の合意
- 国連安全保障理事会を含む国際社会の支持
- 加盟国による部隊の派遣
-
という原則に基づき派遣される。
レバノン、コンゴ、キプロスなどに派遣され、1988年ノーベル平和賞。
これらいわゆる国連軍に似たものとして、多国籍軍 (Multi National Force) がある。
これは国連の統制下に置かれたものではなく、費用も派遣国が負担。
1991年の湾岸戦争、1999年の東ティモール平和回復活動などに用いられた。
なお、コソヴォ紛争解決のためのユーゴスラヴィア空爆 (1999) はNATO軍により行われた。
ポイント |
平和維持軍 |
多国籍軍 |
国連安保理の承認 |
必要 |
必要 |
受入国の同意 |
必要 |
必要 |
部隊参加への決定 |
派遣国の自発的な意思 |
左 同 |
費用負担 |
国連が派遣費用を負担 |
派遣国が拠出 |
指揮権 |
国連事務総長が任命した単一指揮官が全部隊を統帥 |
最も多くの兵力を派遣した国が指揮権を持つ |
全般的特徴 |
派遣国の財政負担が少なく、国際的協調の印象を強められる。 |
少数の国で派遣計画を策定でき、迅速な派遣が可能。 |
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