そもそも「石油」とは何でしょうか?
一言でいえば、「炭化水素」 (CnH2n+2) という物質を主な成分とする化石燃料のことです。
ただ、単に「石油」といった場合、範囲が広いので、その中には次のようなものが含まれる場合もあるので、注意しましょう。
- (1) 地下から産出する、いわゆる「原油 (crude oil)」
- (2) 原油を精製加工して得られる各種液体燃料、潤滑油などの石油製品 (petroleum product)
- (3) 原油に随伴して産出される「天然ガス」
- (4) 個体に近い超重質油である「アスファルト」
(3)(4)を石油に含めるのはあまり一般的ではありませんが、「炭化水素」という点では同じ物質です。
石油は、他のエネルギーより優れている点がいくつもあります。
- 1.常温・常圧で液体 → 採取・輸送・貯蔵が容易 …… 同じ化石燃料でも、石炭は固体なのでパイプライン輸送は出来ない。また天然ガスは(LNGにしない限り)タンク・ローリー輸送が行えず、パイプライン敷設やLNGプラント等の巨額の設備投資が必要。それに対し石油は18lポリタンクに詰めて簡単に持ち運びが可能。世界中どこでも価格の高い地域にタンカーで運んでより大きな利益を上げられる国際商品でもある。
- 2.石油はエネルギー密度が天然ガスの2倍あり、輸送用内燃機関、特に航空機のジェットエンジン等の燃料としては、石油以外のエネルギーは現在の技術では考えられない …… 例えば東京→ニューヨークを結ぶジャンボ・ジェット機は機体重量が100t、乗客と貨物が100tに対して、石油燃料が100t、合計300tの総重量で構成される。石油燃料が100tとは多いと思うかも知れないが、逆に、エネルギー密度の高い石油だからこそ100tで済む。
- 3.石油の燃焼設備の設置場所に制約が無い …… 石油火力は原子力や再生エネルギーと異なり、需要地でエネルギーを発生させられる究極の分散型エネルギー。
原油の分類
精製前の原油は、生産される油田ごとに少しずつ性状が違っていて、そのため大油田から算出される原油は、それだけで1銘柄として取引されますが、近くの品質の似たいくつかの油田の原油をブレンドした銘柄もあります。
逆に、一油田の原油でも、異なる生産層から別々の性状の原油が取れる場合、それぞれを別銘柄とした原油が出荷されることもあります。
さらに、米国のウェスト・テキサス・インターミディエイト (WTI) のように、油田自体としては生産減退が進み、生産量は少量ですが、その銘柄が先物取引の指標となっているために重要視される原油の銘柄もあります。
原油の性状は、米国石油協会(API)が規定する比重で分類することが一般的です。
API比重は数字が大きいほど軽くなります。
API比重 | 種類 | 銘柄例 |
---|---|---|
39゚以上 | 超軽質油 | WTI(44゚)など |
34~38゚ | 軽質油 | オマーン原油、アラビアン・ライト、北海ブレントなど |
29~33゚ | 中質油 | ドバイ原油(31.7゚) など |
26~28゚ | 重質油 | |
26゚以下 | 超重質油 | カナダ産ビチューメン(8゚)、オリノコ・タール など |