「埋蔵量」は誤解を招きやすい言葉です。用語の定義を確認して、間違えないようにお使い下さい。
まず、地下に油ガス田があるとします。
この時、油ガス層に存在する全ての油ガス量を「総資源量(原始埋蔵量)(Initial Hydrocarbon in Place)」と呼びます。
しかし、この「資源量」を人間は全て掘り出すことは不可能です。技術的な限界があるからです。
まず、「発見済み (discovered)」であること。「未発見資源量」は、どんなに採掘技術が進歩しても、絶対に掘り出せません。
次に、「発見済み資源量」のうち、現在の技術で何パーセントを取り出すことが出来るか、計算します。この割合を「回収率 (Recovery factor)」と呼びます。
ここでようやく、技術的に採掘可能な資源量が計算できます。
★「発見済み資源量」×「回収率」=「技術的回収可能資源量(総可採埋蔵量)(Initial Reserves)」
しかしこれは、最終的にどれだけ採れるかの数字であり、これまでどれだけ採られ、今後採れる量がどれだけ残っているかを示しているものではありません。我々が一番欲しいのは、今後、どの程度採れるのかの数字のはずです。
そこで、「技術的回収可能資源量」から、「累計生産量 (Cumulative Production)」を差し引けば、現時点でどれだけ回収可能かの「回収可能資源量 (Recoverable Resources)(Reserves)」が出てきます。
これで終りではありません。「回収可能資源量」と言っても、もし原油・ガス価格が低く、経済合理性に合わない場合、実際に採掘は行いません。
そこで、評価時点に於いて、経済性が成り立つ油井部分の「回収可能資源量」だけを合計して、初めて「可採埋蔵量 (Reserves)」、いわゆる「埋蔵量」が算出されるのです。
非常にややこしいですが、ともかく、実際に地下にある量のごく一部しか、「埋蔵量」には計上できないということをご理解下さい。
さらに、上の計算原理から、次のようなことも言えます。
・「発見済み資源量」が増えれば、「埋蔵量」は増える
・採掘技術が進歩(回収率が向上)すれば、「埋蔵量」は増える
・油ガス価格が上がれば、経済性が向上して「埋蔵量」は増える
・採掘コストが下がれば、経済性が向上して「埋蔵量」は増える
かつて「石油の埋蔵量は30年分」と言われましたが、その後30年経ち、残存採掘年数はかえって長くなっています。
その秘密は、上のような、埋蔵量についての定義にあります。この定義を理解することで、埋蔵量の増減に首を傾げることはなくなるでしょう。
2Pって、何?
「可採埋蔵量」の中身も、詳しく見れば、次の3つに分類されます。
- 1.確認可採埋蔵量 (Proved reserves) …… 既発見かつ経済的に生産可能な埋蔵量。
- 2.推定可採埋蔵量 (Probable reserves) …… 既発見だが、現在は経済的に生産できない。しかし将来の経済性改善や操業・採収技術進歩により生産を見込める埋蔵量。
- 3.予想可採埋蔵量 (Possible reserves) …… 「推定可採埋蔵量」地域の外側に合理的に予想できる埋蔵量。商業生産能力は未証明。
1の「確認可採埋蔵量」はほぼ確実に生産できる埋蔵量で、米国証券取引委員会(SEC)も有価証券報告書に埋蔵量と記載する場合はこの数字を載せるように指導しています。
しかし、投資家の多くは、1に加え、2の「推定可採埋蔵量」を加えた数字を、事実上の埋蔵量として投資評価等に役立てています。SECも有価証券報告書の注記に参考データとして推定可採埋蔵量を掲載することは禁じていません。
なお、「確認可採埋蔵量」+「推定可採埋蔵量」の埋蔵量は、英語の「Proved」と「Probable」の頭文字を合わせて「2P」と呼ばれ、事実上のその企業・油ガス田の埋蔵量として用いられる数字です。
ちなみに、「確認可採埋蔵量」+「推定可採埋蔵量」+「予想可採埋蔵量」の埋蔵量は、英語の「Proved」「Probable」「Possible」の頭文字をを合わせて「3P」と呼ばれますが、これを事実上の埋蔵量とみなすことはあまり行われません。